クウネル遊ぶ。

おもいたったことを思い立ったタイミングで。

奇跡のように美しかった夏の日。

2011年7月のこと。

5年前のことを書いてみるというお題なので、5年さかのぼった時のことを思い出してみます。
きっとお題としては7月じゃなくてもいいんだろうけどね。

 2011年といえば、なんと言っても東日本大震災
私は有り難いことに何の被害もなく、皿が何枚かと花瓶が幾つか割れたり、積んでおいた本などが雪崩を起こして床を占領していたり、その程度のことで「被害」とも呼べないもの。
直前にグレることがあって休みをもぎ取り、震災当日は出社もせずに山奥のコテージにいたので、帰宅難民にすらならなかった。

翌々日の日曜日から怒涛の日々が始まったわけだけど、詳しく書くと長くなりすぎるし(人生で1、2を争う辛い時期でした…)いろいろ支障があるので、取り敢えず震災関連の話はここまで。
私が書くのは7月のことだし!!
(無理やり感、満載)
(だって思い出すと本当に今でも苦しくなるんだ。そこから派生したあれこれを思い出して)
(そのうち自分の中で消化できるといいな)

で、その年の7月。
たぶん、相変わらず暑かったんでしょう。大変だったんでしょう。
でもキリキリ痛む胃を抱えて歯を食いしばって働いていた記憶しかなくて、どうにも季節の移り変わりが曖昧なので、「たぶん7月だと思う」頃の思い出にする。

キッツイ毎日ではあったし、休みも割となかったけれども、たまの休みに、私は馬に乗りに行っていた。
朝5時台に起きて、大きな荷物を抱えて6時過ぎの電車に飛び乗り、1時間半くらい揺られた後にバスで20分~30分。
正直、着いた頃には眠気と疲れでボーッとしてるような状態だったけど、それでも受付を済ませて装備を整え、馬場に行く頃にはワクワクしてた。
まだまだ初心者で「どうやって馬に行きたい方向に曲がってもらうか」てなことやってたくらいで、暴れん坊将軍のように走るなんてことは夢のまた夢だったのだけれど、とにかく馬が好きだったので、近くにいて触れ合えるのが楽しくて仕方なかった。
割り当てられた馬を厩舎から連れ出して、おぼつかない手で体をきれいにしたり、鞍をセットしたり、時間が余ったらベタベタ触りまくって嫌がられたり(ひどい)、そんなことばかりしてた。

乗ってる間は、ひたすら日差しの中にいる上に、怪我しちゃいけないから長袖長ズボンに長靴、手袋、衝撃吸収ベスト(名前を忘れた)にヘルメットなんぞを装着してるものだから、そりゃもう暑い。
木陰を歩けたり、風を切って走っていれば(私は)涼しいのだろうけれど、ポテポテ歩いたり小走りしたり曲がったり止まったり待機したり、という状態なので、地獄のような時間だった。
手綱を持ったり鞭を持ったりしているから水なんぞ持ち込めないので、ただただ耐える。
汗が目に入って痛くても、がまん。軽い脱水状態になってる人、いたと思う。何人か倒れてた子もいたような気がする。
たまに風が強かったりすると、一瞬は涼しいんだけど、馬場の砂が舞い上がって目に入ったり(人も馬も)、汗でベタベタな体に張り付いてドロドロになったり、まぁロクなことなかった。
当然、人間だけじゃなくて馬も暑くなるのだけど、フリーダムな子が急に水を飲みに歩き出してしまっても初心者なので制御できず、先生たちがあわてて駆けつける、なんてシーンもあった。

それでも、ほんのわずかずつでも馬と心が通じ合うのを感じる時があることや、厳しくて有名な子が言うことを聞くようになってくれることが嬉しくて、着替えのTシャツをかばんに詰めて通ってた。
下手っぴな乗り手を我慢してくれた馬に人参でお礼を伝えたり、なにより、普段は絶対に見られない高さからの景色が美しくて、足の下から伝わってくる振動とか温度とかが楽しくて。
夏の間は休会する、なんて人も割といたけれど、3~6月はまったく行けなかったから、少しだけ落ち着いた(前月比)7月以降、私は体力的に行けそうな日は馬場に向かってた。
スクール自体は勧誘がすごくて辟易してたし、早起きが苦手な私には行くこと自体がハードル高かったのだけれど、それでも頑張って行っていた。
終わった後の冷たい飲み物ほどおいしいものなかったなぁ。輝いてたなぁ。

そんな暑い中、ビックリするほど優しく涼しい風が吹いて、曇りのような晴れのような微妙な天気で温度もそこまで酷暑ではなく、気の合う馬が割り当てられてレッスンもうまくいく、という奇跡のような一日があった。
前の日なり早朝が雨だったのか、土埃に悩まされることもほとんどなく、馬場の周りの緑が尋常じゃなく鮮やかで、きらっきら輝いてた。
普段は、ただ止まってる時以外は周りに目を向ける余裕なんてなかったのに、この時は本当に穏やかな時間で、馬に向かって「きれいだねぇ」なんて話しかけてたような気がする。
あんなに満たされていて、癒される、ゆっくりした時間って、他にあっただろうか。

結局、仕事絡みでその後また何ヶ月も行けなくなってしまい、その間にスクールの制度も人もいろいろ変わって「お金の無駄だな」と思うことも増えてきて、結局そこは辞めてしまった。
でも、時々ふと、あの光景を思い出すと、とても幸せな気持ちになる。
前後の細かい記憶がほぼないだけに、あの1ヵ月の間、馬場で過ごした時間は、短くてもものすごく充実した時間だったんだな、と思う。

あんな気持ち、最近とんと味わってないなぁ。
スマホばっかり眺めてないで、生きてるものと触れ合いに、暑くても外に出なきゃな。
頑張ろう、私。